聖書箇所ーヨエル書3:1~5

◇主イエスを失ってうなだれていた弟子たちに、五旬祭(ペンテコステ)の日に、神の力である聖霊が注がれた。そして「4:一同は聖霊に満たされ、“霊”が語らせるままに、ほかの国々の言葉で話しだした」。

◇それを聞いて驚く者たちもいたが、「13:新しいぶどう酒に酔っているのだ」とあざける者もいた。その時ペトロが、「16:これこそ預言者ヨエルを通して言われていたことなのです」と引用したのが、ヨエル書3:1-5だった。

◇ヨエル書は1章冒頭で「ああ、恐るべき日よ、主の日が近づく。全能者による破滅の日が来る」(1:15)と告げる。ヨエルは歴史の終わりを、恐るべき「主の日、破滅の日」だと告げる。しかし、中には怒りを免れる者がいる。

◇「4:主の日、大いなる恐るべき日が来る前に/太陽は闇に、月は血に変わる。5:しかし、主の御名を呼ぶ者は皆、救われる。主が言われたように/シオンの山、エルサレムには逃れ場があり/主が呼ばれる残りの者はそこにいる」。「破滅の日」にもエルサレムに住む我らユダヤ人だけは救われる。

◇旧約にはそういう排他的な選民意識がある。パレスチナ問題は世界の最大の悩みだ。ユダヤ人の苦難の歴史は世界中が痛みをもって覚えている。しかしだからと言って先住のパレスチナ人を排除し、強引に建国をするというのは無理がある。

◇ヨエル書はこれが書かれた時点では、現代のイスラエルと同じような、民族主義の枠を越えていなかった。しかし今日ペンテコステの日にこれを引用したペトロは、「主の名を呼び求める者は皆救われる」(使徒2:21)でヨエル書の引用を終わり、その先の「5:シオンの山、エルサレムには逃れ場があり/主が呼ばれる残りの者はそこにいる」は省いている。

◇神の愛を裏切った全世界の民に向けられた「全能者による破滅の日」は、キリストが十字架で身代わりとなって死ぬことで免れて、世界が救われた。

◇人々は心を打たれ、「わたしたちはどうしたらよいのですか」(2:37)と問うとペトロが答えた。「悔い改めなさい。めいめい、イエス・キリストの名によってバプテスマを受け、罪を赦していただきなさい」。(2:38)。「41:ペトロの言葉を受け入れた人々は洗礼(バプテスマ)を受け、その日に三千人ほどが仲間に加わった」。

◇ここに最初の教会が誕生した。神の言葉が語られ、聞かれ、決断を与えることが教会の出発だったのだ。 

                            大村 栄